空室・退去・原状回復

空室クリーニングと原状回復の違い|退去清掃・美装との使い分けと発注先の決め方

退去が出た部屋を次の募集に出すとき、「空室クリーニング」「退去清掃」「原状回復」「美装」と、似た言葉がいくつも出てきます。言葉の範囲がずれたまま発注すると、「クロスの張り替えは見積りに入っていなかった」「工事のあとにもう一度清掃が要った」といった手戻りが起きることがあります。

このコラムでは、賃貸物件の管理会社様・オーナー様に向けて、4つの言葉の違いと、部屋の状態からどれを発注すればよいかの見分け方を整理します。先に結論を言うと、4つは「何を元に戻すか」で分かれます。汚れを洗って落とすのが空室クリーニング(退去清掃)、洗っても戻らない傷みを張り替えなどで直すのが工事としての原状回復、内装工事のあとの粉塵やのり跡を取るのが美装です。

空室クリーニング・退去清掃・原状回復・美装の違い

4つの違いは、「対象になる汚れや傷み」と「入るタイミング」で見分けると整理できます。

言葉 主な対象 主な作業 入るタイミング
空室クリーニング(退去清掃) 生活でついた汚れ(水まわりの水垢、キッチンの油、サッシの砂ぼこりなど) 洗浄・拭き上げ・床のワックス 退去後、次の募集の前
原状回復(工事として) 洗っても戻らない傷み(クロスの変色・破れ、床のへこみ・めくれなど) 清掃に加えて、クロスや床材の張り替え 退去後、次の募集の前
リフォーム後美装・新築美装 工事で出た粉塵、クロスののり、養生テープの跡 粉塵の除去・のり跡の除去・仕上げの清掃 内装工事や新築工事のあと、引き渡しの前

(表は当コラムでの整理です。どの言葉にどこまでの作業を含めるかは業者によって違うことがあるため、発注のときは言葉ではなく作業範囲で確認してください)

空室クリーニングとは、入居者が退去したあとの空いた部屋に入り、次の入居者が内覧できる状態まで汚れを落とす清掃のことです。原状回復は、この清掃だけでは戻らない部分まで含めて、部屋を次の募集に出せる状態へ戻す作業を指して使われることがある言葉です。ただし「原状回復」は、契約や費用負担の話で使われる場合は意味が変わります(後の見出しで説明します)。

空室クリーニングと退去清掃は同じもの?

呼び方の違いで、どちらも「退去後の空室に入る清掃」を指して使われます。おそうじハウス札幌でも、この2つは同じサービスとして扱っています。

作業の範囲は、キッチン・浴室・トイレ・洗面台の水まわり、居室の床、窓・サッシ・網戸、玄関・ベランダまでを一通り仕上げるのが当社の基本です(詳しくは空室クリーニング・退去清掃のページ)。発注する側が押さえておきたいのは、次の2点です。

  • 清掃で落とせるのは「表面についた汚れ」までです。長年のヤニで壁紙そのものが変色している、日焼けで色が変わっているといった、素材が変わってしまった部分は洗浄では戻りません。
  • 当社の空室クリーニングは、現地の電気と水道が使えることが前提です。退去後に止まっていることが多いため、開栓・通電の手配が必要になります(張り替えを含む原状回復では、水道・ガス・電気をお借りします)。

なお、入居者が住んだままの部屋に入る清掃は、当社では「居住中クリーニング」として別の料金になります。家具や荷物があるため、養生と作業の動線を確保する手間がかかるからです。

「原状回復」は2つの意味で使われる

原状回復という言葉は、「部屋を直す作業」の意味と、「借主が負担する範囲」の意味の両方で使われます。管理の実務では、この2つを分けて考えるのが安全です。

作業としての原状回復:次の募集に出せる状態に戻すこと

清掃や内装の現場で「原状回復」と言うときは、退去後の部屋を次に貸せる状態に戻す作業全体を指していることがあります。当社の原状回復も、洗浄で戻る箇所は洗浄で、戻らない箇所はクロスや床材の張り替えで仕上げる、という内容です(詳しくは原状回復のページ)。

契約・費用負担の言葉としての原状回復

一方、民法の賃貸借の規定や国のガイドラインでは、原状回復は借主が負う義務の範囲として扱われています。民法第621条は、借主(賃借人)が借りたあとに生じた損傷について、賃貸借が終わったときに原状に戻す義務を定めていますが、その損傷から「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」としています。また、ただし書きで、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない(原状に戻す義務を負わない)としています(e-Gov法令検索「民法」第621条)。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、「賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」ことを明確にしています(国土交通省「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」/2026年9月時点)。このガイドラインは賃料が市場家賃程度の民間賃貸住宅を想定したものです(オフィスや店舗などの事業用物件は、この想定の外になります)。また、すでに結ばれている契約については契約内容に沿った取扱いが原則とされています。ただし、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、ガイドラインを参考にしながら話し合うよう案内されています。

つまり、次の募集のために部屋を整える作業の範囲と、そのうち借主に負担を求められる範囲は、同じではありません。作業の見積りは「部屋をどこまで戻すか」で決まり、費用を誰が負担するかは契約書の定めやガイドラインの考え方を踏まえて個別に判断することになります。この負担区分について、当コラムでは断定しません。判断に迷う場合は、契約書を確認したうえで専門家などにご相談ください。

ガイドラインは、トラブルの未然防止に有効な対策として、入居時と退去時に物件の状態をよく確認しておくことと、契約締結時に原状回復などの契約条件を当事者双方がよく確認し、納得したうえで契約することを挙げています。入居時と退去時の状態をそれぞれ写真で残しておくと、あとの話し合いを事実に基づいて進めやすくなります。

どれを頼めばいい?部屋の状態で見分ける3つの問い

発注先に迷ったら、部屋を見ながら次の3つを順に確認します。

  1. 洗えば落ちる汚れか。水まわりの水垢、キッチンの油汚れ、サッシの砂ぼこりなど、表面についた汚れは空室クリーニングの範囲です。
  2. 素材そのものが変わっていないか。壁紙の変色・破れ・継ぎ目の開き、クッションフロアのめくれ、フローリングの水染みやへこみは、洗浄では戻りません。張り替えを含む原状回復の範囲です。
  3. 内装工事をしたあとか。張り替えやリフォームをした部屋には、粉塵やのり、養生テープの跡が残ります。工事後の仕上げは美装の範囲です(詳しくはリフォーム後美装・新築美装のページ)。

1と2の境目は、見ただけでは判断しにくいことがあります。表面の汚れなのか素材の変色なのかで、張り替える面積、つまり総額が変わるため、現地で「ここは洗浄、ここは張り替え」と切り分けてもらってから発注すると、見積りの食い違いが起きにくくなります。当社では、目立たない箇所でテスト洗浄をして落ち方を確かめてからご提案することもあります。

もう一つ、部分的に張り替える場合は、年数が経った既存の壁紙との間に色や質感の差が残ることがあります。廃盤になった品番は同じものが用意できません。面ごと・部屋ごとに張り替えるかどうかは、この差をどこまで許容するかで決めることになります。なお、下地(石膏ボードや根太)まで傷んでいる場合は、張り替えとは別に下地の補修が必要になります(当社では、現地で分かった時点でご報告します)。

清掃と張り替えが両方必要なときの段取り

1部屋で清掃と張り替えの両方が必要な場合、順番と窓口の数で手間が変わります。

  • 順番:張り替えの工事では粉塵やのりが出るため、清掃を先に済ませると、工事のあとにもう一度仕上げが必要になることがあります。張り替えのあとに清掃で仕上げる段取りにすると、二度手間を避けやすくなります。
  • 窓口:清掃と内装を別々に手配すると、日程の調整と立ち会いがそれぞれに発生し、どちらの作業範囲かの切り分けも発注側で行うことになります。同じ業者にまとめるか、別々に頼むかは、この手間と費用を比べて決めます。
  • 時期:札幌では3月・4月は退去が重なる時期で、清掃の日程が埋まりやすくなります。退去日が決まった段階で相談しておくと、募集開始日から逆算した日程を組みやすくなります。

当社では、清掃だけ、張り替えだけのご依頼も、両方をまとめてのご依頼も承っています。

よくある質問

退去清掃は当社に、クロスの張り替えは別の業者に頼んでもいいですか?

もちろん可能です。その場合は、張り替えの工事日と清掃日の前後関係を先に決めておくと、工事後の粉塵を清掃で仕上げる段取りが組めます。なお、工事の養生の撤去と廃材の搬出は当社の作業範囲外のため、清掃に入る前に工事側で済ませておいてください。

入居中の部屋の清掃も、空室クリーニングと同じ料金ですか?

当社では、入居中のお部屋は「居住中クリーニング」の料金になり、養生と搬入経路の確保が必要なため空室より高くなります。料金は料金ページでご確認いただけます。

空室クリーニングの費用は、借主に請求できますか?

契約書の定めや個別の事情によって扱いが変わるため、当コラムではお答えを断定しません。前述の民法第621条と国土交通省のガイドラインの考え方を踏まえ、契約書の内容を確認したうえで判断し、迷う場合は専門家などにご相談ください。当社からお渡しする作業前後の写真付き報告書は、状態を説明する資料としてお使いいただけます。

まとめ:言葉ではなく「何を戻すか」で発注する

空室クリーニングと退去清掃は、どちらも退去後の空室に入る清掃です。原状回復は、作業としては清掃で戻らない部分の張り替えまでを含めて使われ、契約の言葉としては借主が負う範囲を指します。美装は工事のあとの仕上げです。発注のときは言葉だけで伝えず、「洗えば落ちるか」「素材が変わっていないか」「工事のあとか」で部屋を見て、作業範囲を見積書で確かめるのが確実です。

出典:e-Gov法令検索「民法」第621条/国土交通省ホームページ「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」。国土交通省ホームページの内容は、要約・編集して紹介しています。

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